
完全自動化(Lights-out)データセンターとは?【特集】
ロックダウンとライツアウト
大規模な施設を持つ事業者は、そのようなことをする必要性を感じていません。しかし、彼らは皆リモートで運用管理できる能力を持っています。そしてそのパワーは2020年のコロナ禍の中で証明されました。
ステイホーム指示に伴い、データセンター事業者の遠隔制御系サービスの利用数は急増しました。QTSデータセンターのCTOのBrent Bensten氏は、同社のリモート管理ポータル(サービスデリバリープラットフォーム:SDP)へのログインは制限が開始された最初の3週間で30%増加し、ユーザのシステム利用時間は倍増しました。
その後サイトへの訪問は許可されましたが、人々は遠ざかりました。彼らははるかに少ない(現場への)介入でサイトを運用できることに気付き、多くの人々がリモート管理の価値を発見しました。Bensten氏は次のように述べています。「Covid-19は( DCIM などの)リモート管理ツールを利用するのに最適なケースであり、顧客は以前はオンサイトで行っていた作業をリモートで行うようになった」
【参考】withコロナ期間、海外データセンター運用はどのように対応したか?
ライツアウトあるいはスキルアウト?
多くの場合、「ライツアウト」は、コスト削減策として、あるいは熟練スタッフの採用の難しさへの対処策として、データセンター運用で高度なスキルを要求しないようにする方法です。
Schneider ElectricのSteven Carlini氏は、ブログ投稿の中で「将来あらゆるデータセンターがライツアウト(完全自動化)する理由」に関する説明を約束しています。ブログでは、パンデミックや部分的なスキル不足に対処するために、企業は自社内のデータセンターを可能な限り「ライツアウト(完全自動化)」させる必要があると主張しています。
「ライツアウトと無人は完全に同一ではないかもしれない」とCarlini氏は言います。「それはセキュリティスタッフが現場に居る可能性が高いから」彼は、データセンターでは基本的な機械操作スキルを持つ警備員を雇い、プラグアンドプレイによるハードウェア交換を行うべきだと提案しています。「企業は既にZoomガイド付きのメンテナンス・修理を実験している」
多くの場合、「ライツアウト(完全自動化)」データセンターのアイデアは、「スキルを必要としない運用」に変わりました。
海底探査
では、ライツアウトデータセンターが実在したことはあるのでしょうか?そのような運営が行われている施設はあるのかもしれませんが、DCDはまだそのような情報は受けていません。それには秘密の理由があるのか、あるいはAOLのATCのように失敗したからなのかもしれません。
しかし、1つの大きな例外があります。
マイクロソフトは、小規模(240kW)のデータセンターを2年間運用し、その間サイトへ人間が訪問した事は全くありませんでした。それは施設が海底にあったためです。
2018年、Project Natickと呼ばれるマイクロソフトの研究チームは、データセンターラック12台にサーバをフル実装し、それらを圧力容器内に積み込み、スコットランド沖の海底に沈めました。2年間の間、サーバは一切手を付けられず、プロジェクトでのサーバとの唯一の通信手段は、電源ケーブルと通信ケーブルを介したものだけでした。
マイクロソフトは2020年にSSDC-002(SubSea Data Center 2 : 海底データセンター2)を回収した際、Natickの非反応性窒素ガスで満たされたシリンダー内の864台のサーバと27.6ペタバイトのストレージはAzureクラウドからのワークロードを実行していました。
「私たちは、誰も触れずにこれを25か月と8日間運用した」と、NatickのリーダーであるDavid Cutler氏はDCDに対し語っていました。そして、その実験結果は良好でした。
信頼性とムーアの法則
海底サーバは、地上での同等サーバよりも約7倍ほど信頼性が高かったようです。Natickでは中古の機器を使用し、135台を地上のデータセンター内に配置し、残りを海底のコンテナ内に配置しました。
「地上サーバでは、135台のうち8台が失われた」とCutler氏は言います。「海底では、855台のうち6台だった」サーバではすべて同じタスクが実行され、メンテナンスは行われませんでしたが、標準的なデータセンターにおける振動や酸素の大気が影響を及ぼしたようです。
ライツアウト運用に対する大きな反対意見の1つは、サーバやストレージは定期的にリプレースされる必要があるという事実です。これは、摩耗が理由ではなく、旧式化する為です。何十年もの間、ITハードウェアは ムーアの法則 に従ってきました。
現在、シリコンプロセスは限界に達し、ムーアの法則は終わりに近づいており、サーバの寿命は長くなってきています。「エネルギー節約するための非常に強力な方法はまだある」と、Uptime InstituteのリサーチディレクターであるRabih Bashroush氏は述べています。「 9年前までのサーバを交換する場合は」
Cutler氏は、このことが事業者をライツアウトへ移行させていくだろうと予測しています。「データセンターの生涯コストの大部分はサーバである。ムーアの法則終焉後の世界では、2年ごとにインフラストラクチャを変更する理由は実際にはない」
エッジでのライツアウト
従来型のデータセンターは断固として人員を配備したままですが、最新の開発においては、確かにライツアウト運用が必要となるかもしれません。これは、エッジコンピューティングで大きく取りざたされている領域です。
IoTや、メディアやアプリケーションを自宅にストリーミングする人々、などの新しい動きは、非常に分散された低遅延リソースの要件につながっています。
これは、人々やデータソースの近くに配置される多数の小規模施設の必要性を意味します。その多くはNatickのSSDC-002よりもはるかに小規模であり、その一部は街灯柱の耐候性ボックスであったりします。
電話網が屋外ファイバ配線キャビネットに対して行ったように、サイトへの訪問をほとんど排除できない限り、エッジのキャパシティに対する運用保守サービスは経済的な悪夢になります。
「私たちが行ったように、それらはライツアウト(完全自動化)する傾向がある」とCutler氏は言います。「エッジについて考えるとき、それは自身で動作するものになってしまうでしょう。たどり着くのが困難だと、人々は長い間そこには行きません」
この話題は私たちをライツアウト誕生の頃に引き戻します。Mike Manos氏がAOLでこのアイデアを発表した時、彼は確かにAOLのユーザ主導コンテンツを顧客に近づけるよう設計されたエッジ機能について話していました。Manos氏は当時、フェイスブックというスタートアップの集中型アプローチに対し、やや皮肉を述べつつ、AOLはビッグコンテンツプレーヤーになりつつあると述べていました。
ライツアウトにはシリアスな技術が要求されますが、華やかなものではありません。壁に設置されたボックス内のサーバは注意を求めることはできません。無視する必要があるキットにおいては、ライツアウト(完全自動化)は必要となります。
Data Center Dynamics
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