DC事業者が新型コロナの影響で想定しておくべき事【特集】

現在の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)パンデミックは、これまでに直面したことのない脅威です。それは生活、企業、そしてより経済全体に計り知れない影響を与えるでしょう。データセンター業界は幸運なセクターの1つではありますが、依然として重大な課題、財務リスク、そして不確かな未来に直面しています。

これが米国とヨーロッパ地域における契約や建設にどのように影響するのか?DCDは、新型コロナウイルスの影響に関する進行中の一部の動きについて、Eversheds Sutherland(法律事務所)の弁護士に話を聞きました。

建設の不確実性

クラウドサービスの成長は既に高く、特に会議やメッセージング分野では、成長が加速しています。データセンター構築プロジェクトは、予定通りに工程を完了する必要に迫られていました。 建設工事の継続が問われている中、これらのプロジェクトの多くに対する圧力は高まっています。

「私たちはヨーロッパ各国の政府が建設現場での作業に制限を課すのを息を殺して待っていた。そして、それが重要インフラに拡大していくのかどうかを。」英国に拠点を置く EvershedsのパートナーのMark Chester氏はDCDにこう語っています。

国家が急速に進展する状況に対処するように、規制や制限措置は日々変化しています。3月26日の終わりにChester氏と会話した際、不確実性は深刻でした。「イギリスで昨夜(3月25日)、建設現場での活動の中止について何か発表されるだろうと予想していた。」とChester氏は言います。

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「しかし、その発表はなかった。発表がなかった理由は、イギリス政府がある種の区別について非常に慎重に考えているからだと思う。」つまり、当局はどのプロジェクトが不可欠で、作業進行を許可すべきかを定義したいと考えているようです。

来年以降に大規模プロジェクトの作業を一時停止することは理にかなっているとChester氏は言いますが、「サイトの請負業者に対し、今後数か月で完了できるデータセンターの施工を中止させるのは、少し無謀のように思える。」

Covid-19が引き起した需要の急増について強調し、「我々のハイパースケールクライアントの1社が今週初め、オンラインビデオ会議サービスの新規加入者が1日あたり300万人も増加している、と私たちに話していた。」

そのため、ハイパースケーラーは容量を増加させるためにあらゆるレバレッジを活用しています。「今年が納期のサードパーティが運営するデータセンターにおいて、ハイパースケーラーにより予約や先買権などが行使される可能性がある。彼らは現在、行使を行おうとしているのです。」

北米地域では、「私たちは現在継続中の建設プロジェクトを持っている。」と、法律事務所の米国データセンター業務責任者であるRob Plowden氏はDCDに語っています。

「DC事業者である私のクライアントは、進行中の建設プロジェクトについて心配している。サプライヤーや部材の不足が発生するだろうと考える中、彼らはどのように運用を継続していくかについて懸念している。」

安全第一

これはすべて、実際の危険を背景に起ります。建設会社は、可能な限り現場スタッフを保護するために運用手順を変更しました。彼らは一時停止勧告に対し交渉する準備をしていますが、直接命令があった場合は作業を停止する必要があることも十分に認識しています。

それが政府の命令である場合、契約費用と遅延の一部をカバーすることができるかもしれません。 Chester氏は言います。「勧告は必ずしも不可抗力な出来事ではありませんが、政府から作業中止の指示が出た場合、作業者は施設の建設やデータセンター内でのエンジニアリング作業を中止する必要があります。それは、突然不可抗力な出来事になるのです。」

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建設契約における不可抗力の条項では、制御不能な状況が発生した場合に請負業者が作業を一時中断することができるとしています。問題は、巨大なハイパースケール顧客とのコロケーション契約の多くが、この不可抗力による遅延に関し要求できる数に上限値があることです。

「1つの極端な例として、一般的に60〜90日の猶予を持たせているその他の妥当なエンドユーザーに比べ、ある巨大なグローバル・ハイパースケーラーは契約を打ち切る条件として、不可抗力イベントに対し、請負業者が主張できる時間を最大24時間までと課している。」

しかし、これらハイパースケール顧客の需要はすでに高く、またその作業を行える能力を持つ請負業者は少なく、政府が建設工事を禁止すると、他に介入できる業者はなくなります。Chester氏は、これらハイパースケーラーがこのような契約打ち切り権利を行使する可能性は低いと考えています。「それは、鼻を切り落として自分自身の顔を虐めるようなものだ。」と彼は言います。「彼らは依然としてより早くスペースを必要としている。そして、最終的に起きてほしいと思っている事は、契約のフェイルオーバーです。」

政府命令の前に建設現場が閉鎖されると、より厄介な状況が起こります。アイルランドのCloneeでは、作業者がインフルエンザのような症状を示し、Facebookと請負業者のメイスがデータセンターの拡張工事の中止を判断しました。

Chester氏は、特定のケースについて話していなかったことを強調し、そこでの中止の決定は共同でなされたようだとし、このような状況では困難な事があるかもしれないと述べています。「彼らは不可抗力の観点からいくつかの難題に直面していた。それは、地元当局からの要請ではなく、一方的に下した決定であり、必ずしも契約で許容される遅延イベントではないからです。」

多くのクライアントから契約についてEversheds Sutherlandに問い合わせがきており、何がカバーされているかを確認している状況だと言います。ほとんどのデータセンター建設プロジェクトは、米国のAIA、英国のJCT、ドイツのVOB、およびFIDICを含む標準的なテンプレートを使用しています。

「そして、これらの一般的な契約テンプレートのいずれも、パンデミックまたはその流行による遅延イベントについてはカバーしていない。」とChester氏は言います。「その内容が具体的に修正されていない限り、私はそのようなことは通常ない事だと思う。そのため、[政府の命令なしに遅らせる]決定は、通常、その建築契約の下で許容される延長とはならない。一方、ハイパースケーラーが、納期の遅れにより請負業者を苦しめるような、彼らにとって不利になるPRを望んでいないと期待するでしょう。」

「私たちはここでは人間の良識に依存している。」とChester氏は楽観的に付け加えました。さらに、彼は、万が一の場合には法的な論争になるだろう、と述べています。パンデミックの規模を考えると、「裁判所はおそらく契約企業を助けるために後方支援するだろう。」

M&Aに関する見通し

Covid-19は、合併、買収、およびデューデリジェンスを必要とする合弁事業を含む大規模なビジネス取引に関する遅延を引き起こす可能性もあります。「デューデリジェンスには移動が必要です。そして、移動は各地の避難勧告ルールによって制限されている。」とPlowden氏は言います。

「私はまだニューノーマル(新たな常態)に慣れている段階ではあるが、デューデリジェンスに関してブレーキがかかっているのを確実に見ている。取引の中断はされていないが、遅れている。私はちょうど新たな契約の締結を手伝ったところだ。そこで私は初めて、その地域での避難勧告規則または移動禁止による遅延に関連するデューデリジェンス期間の延長について起草した。」

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一旦制限が解除されたとしても、未処理分残り、さらに遅延が生じる可能性があります。現在、経済の不確実性の中でこれらの潜在的な取引価格が下落する兆候はありませんが、変わる可能性もあります。

デジタルサービスの全体的な需要は急速に高まっていますが、ロックダウンとレイオフの影響により、多くの企業が危機に直面し、コストを削減し、破産を宣言していく可能性があります。

「この影響を受ける顧客、特に小規模の顧客に対し、ある程度の容赦が受けられることを期待している。」とPlowden氏は言います。「オフィスおよび小売部門では、契約解除とは対照的に、多くの容赦があった。オーナーは「今後3か月間は家賃を免除し、その後は月額家賃の1.2倍を支払う」ことで同意しています。

Plowden氏は、現在の容赦に関する戦略は米国の楽観主義に基づいていると警告しているが、「これが私たちの背後にあると、回復は急激かつ迅速になるだろう。」と言います。

彼らは正しいかもしれません。Plowden氏は、「おそらく3か月、4か月ほどでこれが私たちの背後にあるのかもしれない。」と言います。「しかし、場合によっては、1か月前にあった楽観主義は非現実的であることが判明した。」今のところ彼は、決定がこの楽観主義によって知らされ、大不況には移行しないものと信じています。

このパンデミックの長さと影響に応じて、多くの企業がもがき苦しみ、忍耐を求められ、あるいは債務不履行に陥りる企業も出てくるでしょう。より大規模なデータセンター事業者、特にハイパースケール契約を獲得している事業者は、これを乗り切ることができます。地元の顧客が多い1か所または2,3か所のみで運用している中小の事業者は、そうではない可能性があります。

「彼らは施設にプロジェクトレベルの借金を抱えている可能性が高く、プロジェクトのキャッシュフローを処理する際に、顧客からの十分な現金を得られず、貸し手に支払うのに十分な現金もなくなるかもしれない。」いくつかは貸し手からの容赦を得ることができるかもしれませんが、それは永遠に続くことはありません。

「これが続くと、他の不況と同様に、小規模の事業者が影響を受けると思われ、M&A活動、バーゲン・ハンターが見られるようになるでしょう。」

そのような懸念は少なくともしばらくの間は続くでしょう。現時点で、事業者は手元の危機に集中し、スタッフ、顧客、設備を確実に保護する必要があります。

必須でないスタッフはすべて自宅で作業する必要があります。移動しなければならない人は、彼らが不可欠(essential)で重要(critical)な労働者である、ということを証明する書類を携帯すべきだと、弁護士は言います。地元当局がこれに関する特定のガイドラインを提供していない場合でも、安全を見てそうすることが推奨されます。

「私のクライアントへの私からのアドバイスは、彼らの政府機関に手を差し伸べることだった。」とPlowden氏は言います。しかし、パンデミックの深刻さが増すにつれてそれはより困難になったと認めています。

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「2週間前、おそらくデータセンターは、米国ではCybersecurity and Infrastructure Security Agencyから重要インフラであることを確認する手紙を受け取っていました。その後渋滞が増えて、今はそうではないと思う。」

Chester氏は、商品発送時でも同様の予防策を講じる必要がある点を発見しました。一例を挙げると、Excool断熱チラーは英国のウスターからフランクフルトの施設に送られ、ハイパースケール顧客先で今後数か月後に稼働する予定となっています。「私のパートナーの1人はすばらしい仕事をした。文字通り、手紙を作成しました。それには、データセンター事業者のヘッダー付きのメモ用紙に、このキットの運送会社とExcool社双方が、配送途中で阻止された場合に備えて、安全に到着できるような内容であった。」

「そして実際、それが有用であることが判明した。それがフランスを輸送中に、このキットの輸送に関する問題が発生していた。」

これに関する公式のガイドラインはありませんが、国境警備隊、警察、および保安職員は人間であり、同様シフトのルールに混乱し、増加する感染者と死者に怯えています。トランジットの途中で必要なものを見つけるよりも、ドキュメントを作成する方が簡単です。

できる限り入館制限を行う

また、データセンターへの入館についても同様に注意することをお勧めします。両弁護士は、4か国での施設への入館を大幅に制限するとしたエクイニクスの決定を賞賛しました。

「必然的に、エクイニクス担当者でさえ簡単に入館ができない現在のエクイニクス・データセンター内に機器を導入しようとしたい顧客は存在する。」とChester氏は言います。「しかし、そこの入館する人の数を根本的に減らし、ウイルス感染リスクを減らし、効果的にサイトの完全消毒を行ためにサイトの人員シャットダウンすることができれば、停止のリスクを減らすことができる。」

新型コロナウイルスへの感染が後日判明した人物が施設に入館していた場合、データセンター事業者が、顧客に通知することも不可欠です。新型コロナウイルスに感染した人物がサイトに立ち入った際にDigital Realtyが行った対応です。

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「これはいくつかの議論があった領域だ。」とPlowden氏は言いました。「米国では、もし私が施設の管理者で、過ちを犯した場合、または誰かに質問しなかった、あるいは感染した人物を止めなかったために、その人物が侵入して施設が感染する…それはデータセンター領域を超える範囲で訴訟が起こると思う。」

Plowden氏は、法的な状況は不明確であると述べたが、それは施設側の責任に例えました。例えば家主が駐車デッキで強盗されていることを知っていて、後で強盗があった事をテナントに知らせなかった場合、家主は責任問題に直面するでしょう。

「施設のオーナーが汚染を知っていながら、その顧客やテナントに警告するための予防策を講じずに、顧客・テナントが感染した場合、法的責任が生じるだろう。」

このように法的リスク、現在の需要の急増、および供給の遅れの課題もある中、この状況がどのくらい続くかわからないため、新型コロナウイルスの長期的な影響を理解することは困難です。

しかし、影響があることは明らかです。契約はパンデミックに対応するよう変更され、企業は同様のイベントに対応するために、更に多くのビジネス継続性計画を立案し、そして新しい保険の提供も出てくるでしょう。

「施設での重要な備品の備蓄に関しても、長期的に変化が起きると思う。」と Plowden氏は言います。「大不況のときと同じように、私たちは間違いなく学んだ教訓を残すでしょう。」

「私たちは時間の経過とともに賢くなり、ドキュメントを改善し、人々は自然に考えるようになるでしょう。」「はて、なぜ今まで考えてこなかったんだろう?」と。

Data Center Dynamics

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