ロケット打ち上げ企業Rocket Lab、Iridiumを80億ドルで買収 宇宙事業の垂直統合を加速

衛星運用とロケット打ち上げを一体化した米宇宙企業が誕生

ロケット開発と打ち上げサービスを手掛けるRocket Labは、大手老舗衛星通信事業者のIridium Communicationsを買収する予定です。

今週発表された内容によると、Rocket LabはIridiumの発行済み普通株式すべてを1株当たり54ドルで現金および株式により取得します。企業価値にして約80億ドルとなり、この取引は2027年半ばに完了する見込みです。

Rocket Labの創業者兼CEOであるPeter Beckは、声明で次のように述べました。「Iridiumが持つ長年の実績、信頼性の高いインフラ、需要の高い周波数帯域と、当社の幅広く実績のある打ち上げおよび製造能力を組み合わせることで、まったく新しい市場を開拓できる可能性があります。私たちは単に既存事業を維持するだけではなく、それを基盤として新たな価値を築き、次世代の宇宙アプリケーションを切り開くとともに、既存顧客と新規顧客の双方に求められるサービスを提供していきます。」

Iridiumの初代Lバンド衛星は、1990年代後半に打ち上げられ、約20年後に運用を終了しました。バージニア州に拠点を置く、同社の第2世代衛星群「NEXT」の開発は2017年に始まり、現在は80機の衛星でネットワークを構成しています。

今回の買収により、Rocket LabはIoTD2D(Direct-to-Device)位置情報・航法・時刻同期(PNT)分野における様々な衛星製品とサービスに加え、特にLバンドにおける周波数帯域へのアクセス、そして500社以上に及ぶIridiumのパートナーエコシステムを獲得します。

一方、ナスダック上場企業であるIridiumは、Rocket Labの2段式小型ロケット「Electron」や、開発中の再利用可能な中型ロケット「Neutron」を利用できるようになります。Neutronは、SpaceXのFalcon 9と同等の打ち上げ能力を目指しており、Falcon 9の1回あたりの打ち上げ費用約7,400万ドルに対し、5,000万ドルというさらに低コストでの打ち上げを目標としています。ただし、この目標は非常に野心的なものとみられています。

今回の取引の一環として、Rocket Labはドイツ銀行とWells Fargoから、36億ドル規模の364日満期シニア担保付きブリッジローンの契約の確約を取得しました。同社は今回の取引の現金払い部分について、自社の貸借対照表上の現金などの手元資金に加え、負債および株式による資金調達を組み合わせて賄う方針です。Iridiumの時価総額は約55億9,000万ドルとなっており、買収提案を受けて同社株は上昇しています。

Rocket Labの最新ミッション「Ten Owl of Ten」は6月26日夜、ニュージーランドの同社の打ち上げ施設からElectron Rocket のHASTE仕様機を打ち上げました。このミッションでは、東京に本社を置くSynspectiveの10基目となる地球観測衛星を搭載しました。これはRocket Labにとって2026年で12回目、Electron Rocketとしては9回目の打ち上げとなりました。

価格面では、現時点でSpaceXに匹敵するロケットは存在しません。しかし、SpaceXのライドシェア(相乗りサービス)打ち上げは需要が非常に高く、長い待機期間が発生しています。また、同社は米国企業を優先するため、米国以外の顧客の案件が後回しにされているとの指摘もあります。

欧州などの勢力圏が米国やマスク氏への依存度を減らしたいという願望を表明する一方で、ニュージーランドにルーツを持つRocket Labのようなより独自のニーズに応えるロケット打ち上げ企業は、シリコンバレー中心の支配的な企業から地政学的に一定の距離を置いていると主張し、宇宙航空分野における安定したパートナーを求める衛星事業者にとって、魅力的な選択肢となる可能性があります。

Rocket Labは、Iridiumが長年かけて築き上げた事業基盤を生かし、新たな市場への進出と宇宙関連サービスの創出を進めていく考えです。

IridiumのCEOであるMatt Deschは5月、DCDの取材に対し、AmazonによるGlobalstarの買収や、EchoStarによるAT&TおよびSpaceXへの周波数帯域の売却を受けて、同社にも買収に関する憶測が広がっていたことを認めていました。

同氏は、次のように語っています。「重要なのは周波数資産です。誰もが『それだけ価値があるなら、その周波数を所有するのは誰なのか』を考えています。世界規模で利用可能な周波数資産を保有している企業は、事実上ViasatとIridiumの2社しかありません。Viasatの方がより多くの周波数帯を保有していますが、事情は複雑です。Space42との共有が必要で、一部の周波数帯をLigadoに売却しており、その件で現在も係争中です。当社の周波数資産には、そうした問題はありません。」

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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