新型コロナとeコマースブームが招いた一等地をめぐる競争【特集】

配送センターのお告げ

小売店や店頭がコロナ禍で廃業に追い込まれる一方、オンラインショップへ移行することで不動産業者はパンデミックを切り抜けています。そして購買習慣の変化とともに、小売業者の不動産需要も変化しています。多くの場合、コロナ以前に競合会社が所有していた小さな空きスペースよりも大きな倉庫に目を向けるようになりました。CBREによると、小売スペースから産業用不動産への転換は全米で加速しており、オンラインショップの成長がそれを後押しています。物流施設大手プロバイダーのプロロジス社は、在庫レベルが5%増加すると、3億平方フィート(2800万平方メートル)のスペースが必要になると予測していますが、JLLは、2025年に産業用不動産の需要がさらに10億平方フィート(9,300万平方メートル)増加する可能性があるとみています。

「不動産デベロッパーが、電力へのアクセスが簡単な200,000平方フィート(18,500平方メートル)のビルを新設すると、それは優れたデータセンターにも、産業用のビルにもなりうる」とCvengros氏は言います。

– shutterstock

そして競争は激化しています。オンラインショッピングへの移行はここ何年かの傾向でしたが、コロナ禍はこの傾向をさらに加速させました。マッキンゼーは、2020年に米国でオンライン販売が約30%増加し、倉庫スペースの需要はさらに増加し​​ていると報告しています。CBREは、オンラインショップの成長は速度は鈍化するものの2021年から2022年まで続き、今後2年間で米国に3億3300万平方フィート(310万平方メートル)の新しい産業用スペースの需要が生まれるだろうと予測しています。

「産業側とデータセンター側双方によって、光ファイバへのアクセスを有し電力を得やすい優良サイトをめぐる争奪戦が繰り広げられた」とCvengros氏は言います。「すべての国や地域で同様の現象がみられている。」

オンライン販売と倉庫需要の伸びが見られるのは米国だけではありません。英国のONS(国家統計局)は2020年のオンライン販売は2019年比で60%増加したと見積もっています。同時に、事業用不動産業者コリアーズは2020年を、オンライン販売により産業用不動産の需要が伸び供給が不足したという点で「歴史的な年」と呼びました。2020年の流通倉庫の占有面積は3400万平方フィート(310万平方メートル)を超えました。平均取引規模は、過去7年間の平均250,000平方フィート(23,000平方メートル)を上回る310,000平方フィート(28,800平方メートル)の新記録を達成しました。事業用不動産会社サヴィルズは同様の調査結果を発表し、2020年の倉庫の占有率は、eコマース、英国のEU離脱、倉庫の需要に後押しされて、長年の平均値に比べ80%上昇したと述べています。PwCは、ヨーロッパ本土でも同様の増加を報告しています。

「データセンター事業者の動きが遅い場合、産業側は非常に速く動いている。そのため、データセンターに適した物件や、優れたデータセンターサイトになる可能性のある多くの物件が、大手オンラインショップ業者によって長期リースとして実際に利用されている。」

シカゴ~小売業界とデータセンター業界間の土地をめぐる世界的な争いの縮図

CBREがシカゴを小売から産業用不動産への転換が起きている主要ハブの1つと位置づける一方、データセンターや小売倉庫の大きな案件はここに集まってきています。シカゴ周辺地域は、世界中で行われている小売業とデータセンター間の土地をめぐる競争の縮図となっています。

シカゴはバージニアのような大規模ハブと比較して、長年の間注目に値するものの比較的小さなデータセンター市場でしたが、過去12か月で猛追してきています。North American Data Center(NADC)は、2020年がシカゴにとっては最大のロケーションリースがあった年であり、Microsoftだけで45MW以上がリースされたと報告しています。

「シカゴでは従来、年間25〜30MWがデータセンターにリースされている程度だったが、最近は1社のユーザーが60MWを利用している。この収容率の変遷は注目に値する」とCvengros氏は言います。「収容率全般が天文学的に増えたことだけで一部のプロバイダーにおける需要と供給のバランスが大きく変化し、それによって大手事業者は将来のテナントとしてのクラウドに興味を高めるようになってきた 。」

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