インテル、12量子ビットの量子研究用チップ「Tunnel Falls」を発表

シリコンスピン技術をアピールし、量子コンピュータ研究の “民主化 “を約束

インテルは、量子研究用の12量子ビットチップを発表しました。

この「Tunnel Falls」と呼ばれるチップは12量子ドットの量子ビットを搭載しており、そしてこれはインテルの量子ソフトウェア開発キット(QSDK)内に組み込まれ、研究者たちに共有される予定です。 また同時に、インテルはメリーランド大学のQubit Collaboratory(以下、LQC)と量子コンピューティングに関する共同研究を行うと発表しました。

これは、インテルが研究者コミュニティに公開した最初のシリコンスピン量子ビットであり、同社は、これらのチップを利用可能にすることで量子コンピューティングを「民主化」すると述べ、同社の量子コンピュータビジョンを全力でアピールしています。

インテルの量子ハードウェア担当ディレクターであるJim Clarke氏は、「Tunnel Fallsは、インテルがこれまでに開発した最も先進的なシリコンスピン量子ビットチップで、インテルの数十年にわたるトランジスタ設計と製造の専門知識が活かされている」と述べています。 「この新チップのリリースは、フルスタックの商用量子コンピューティングシステムを構築するというインテルの長期戦略の次のステップとなる。 フォールトトレラント量子コンピュータへの道のりには、まだ根本的な疑問や解決しなければならない課題があるが、学術界はこのテクノロジーを探求し、研究開発を加速させることができるようになった」

研究者たちは、いくつかの異なる量子ビット技術に取り組んでいます。インテルは「シリコンスピン」を支持していますが、これまでの商用量子プロジェクトの多くは、D-WaveやIBMといった企業の超伝導量子ビットを使用しています。 また、IonQの「trapped-ion qubits(イオントラップ量子ビット)」を含む競合技術も注目されています。

インテルは、シリコンスピン量子ビットは、大型かつ超低温まで冷却する必要がある超伝導量子ビットよりも小型で製造が容易であると述べています。

シリコンスピン量子ビットでは、情報(0/1)は1個の電子のスピン(アップ/ダウン)で符号化されます。各量子ビットは基本的に1個の電子トランジスタなので、インテルは相補型金属酸化膜半導体(CMOS)論理処理ラインの比較的標準的なプロセスでこれを作ることができます。

インテルによると、これは、インテルの量子ビットが他の技術と統合しやすく、既存の工場設備でより簡単に拡張できることを意味する、といいます。

インテルのシリコンスピン量子ビットは、約50ナノメートル×50ナノメートルの大きさで、オレゴン州のD1ファブで極端紫外線リソグラフィー(EUV)およびゲート・コンタクト処理技術を使用して、300ミリメートルウェハーで作られます。同社は、Tunnel Fallsチップの製造において、ウェハー全体で95%の歩留まり率を達成しており、1枚のウェハーで24,000個以上の量子ドットデバイスを提供できると主張しています。

同社は、誰もが量子チップを作れるわけではないため、LQCを通じてこのチップを研究機関に提供し、シリコンスピン量子ビットを「民主化」していると述べています。 これは米国陸軍研究局を通じたQubits for Computing Foundry(QCF)プログラムの一環だとみられます。

このプログラムに参加する最初の量子研究所は、LPS、サンディア国立研究所、ロチェスター大学、ウィスコンシン大学マディソン校で、他の研究所もこれに続く予定です。インテルは、これらの実験から集められた情報をコミュニティと共有し、量子研究を進めるとしています。

LPSの量子情報科学主任であるCharles Tahan氏は、「LPS Qubit Collaboratoryは、陸軍研究局と連携して、量子ビット開発が直面する難題に取り組み、明日の量子ビットを創造する次世代の科学者の育成を目指している」と述べています。 「インテルの参加は、スピン量子ビットの探求と量子情報処理への期待を民主化するための大きなマイルストーンであり、産学、国立研究所、政府を結びつけるというLQCのミッションを体現している」

サンディア国立研究所のDwight Luhman博士は、研究所がTunnel Fallsを手に入れたことに「興奮」していると述べています。 「このデバイスは、サンディアの量子研究者が、異なる量子ビット符号化を直接比較し、以前は不可能であった新しい量子ビット動作モードを開発することができる柔軟なプラットフォームである。 この洗練されたレベルにより、私たちは多量子ビット領域で新しい量子操作やアルゴリズムを革新し、シリコンベースの量子システムにおける学習速度を加速させることができる。 また、Tunnel Fallsの期待される信頼性により、サンディアはシリコン量子ビット技術に携わる新しいスタッフを迅速に迎え入れ、訓練することができるようになるだろう」

インテルは、2024年に次世代量子チップのリリースを約束しています。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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